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長野地方裁判所 昭和53年(行ウ)6号 判決 1981年4月23日

松本市本庄二丁目一〇番一七号

原告

竹村徳永こと鄭徳永

右訴訟代理人弁護士

久保田嘉信

杉下秀之

松本市城西二丁目一番二〇号

被告

松本税務署長

右訴訟代理人弁護士

土屋一英

被告指定代理人

六馬二郎

佐藤信幸

神林輝夫

今村公宜

主文

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し昭和五二年七月一日付で原告の昭和四九年及び昭和五〇年分所得税についてなした更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決を求める。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨の判決を求める。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は被告に対し、別表(一)、(二)記載のとおり、昭和四九年分及び昭和五〇年分の所得税についての確定(修正)申告をし、被告は原告に対し、同表記載のとおり、更正処分(以下本件更正処分という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下本件加算税賦課処分という。)をし、これに対する原告の不服申立てに対し、被告らは別表記載のとおり、異議申立及び審査請求棄却の決定をした。

2  けれども、本件更正処分は、被告が原告の雑所得の認定において、昭和四九年分につき、有限会社伊那天竜ボール(以下天竜ボールという。)からの収入利息が七四六万五、〇〇〇円であるのに、これを一、五二七万八、〇〇〇円とし、昭和五〇年分につき、天竜ボールからの収入利息が八三七万八、九五〇円であるのに、これを一、六五六万円とし、かつ天竜ボールの元取締役北原千成、同伊藤勘一に対する貸付金の一部六〇〇万円を免除したのに、これを貸倒損失として必要経費に算入しない点において違法である。

3  よって、原告は、本件更正処分及び本件加算税賦課処分の取消を求める。

二  請求の原因に対する答弁

1  第1項は認める。

2  第2項は争う。

三  被告の主張

1  原告は、訴外株式会社竹村組及び同株式会社三和建材の代表取締役である傍ら、住居地において、金融業類似の方法により、多額の金銭の貸付けを行っていたものである。

2  被告は、原告の本件係争年度の確定申告のうち雑所得につき、過少申告の疑いをいだき、係官をして原告に面接させ、貸付金の利息収入に関する帳簿書類の提示及び右収入に関する説明を求めたが、原告は、右帳簿書類は一切ないとしてこれを提示しないばかりか、右収入に関する説明をせず、その他の調査にも一切応じなかった。

3  そこで、被告は、原告の雑所得を実額によって計算することは到底不可能であると判断し、貸付先である天竜ボールなどを調査した結果を基礎として、推計の方法によって、原告の雑所得金額を算定した。

4  被告は、本件更正処分において、原告の雑所得金額を、昭和四九年分の修正申告額四五四万八、三三四円を、一、二三五万二、四三一円に、昭和五〇年分の確定申告額二四四万六、五〇〇円を一、六三八万九、〇三二円にそれぞれ更正した。

5  原告の雑所得に関する総収入金額のうち、実額によるものは、昭和四九年分につき、貸付金利息収入額合計四七四万円及び雑収入金額二〇万円であり、昭和五〇年分につき、貸付金利息収入金額合計四二〇万円である。

6  被告は、前項の実額によるもの以外に原告の雑所得の収入金額を推計の方法により、次のとおり認定した。

(一) 昭和四九年分 一、四九九万円

天竜ボールに対する貸付金の元本を、一月から四月まで、五、五〇〇万円、五月五、九〇〇万円、六月六、〇五〇万円、七月六、五〇〇万円、八月から一二月まで六、九〇〇万円とし、これに対する月二分の割合による収入利息合計一、四九九万円

(二) 昭和五〇年分 一、六五六万円

天竜ボールに対する一月から一二月までの貸付金元本を六、九〇〇万円とし、これに対する月二分の割合による収入利息合計一、六五六万円

7  被告は、原告の総所得に対する必要経費として、原告が前記貸付金をするため、株式会社竹村組から借入れた金銭に対し、支払った利息、昭和四九年分につき七五七万七、五六九円を、昭和五〇年分につき四三七万〇、九六八円を、それぞれ認めた。

8  原告には、右雑所得のほか給与所得として、昭和四九年分につき七四一万円、昭和五〇年分につき七〇五万円の所得があった。

9  以上によると、原告の総所得金額は、昭和四九年分につき一、二三五万二、四三一円、昭和五〇年分につき、二、三四三万九、〇三二円となり、本件更正処分で認定した総所得金額の範囲内であるから、これを基準とした右課税処分は正当であって何ら違法ではない。

10  原告は、昭和五〇年分の雑所得に関し、天竜ボールの元取締役北原千成、同伊藤勘一に対する貸付金債権の一部六〇〇万円を免除したから、貸倒れ損失として必要経費に算入すべきであると主張するが、そのような貸付金債権が存在したかどうかも疑わしいばかりでなく、右債権の免除が行われたことも信用できない。

11  被告は原告に対し、国税通則法六五条により別表(一)、(二)記載のとおり、本件更正処分によって増加した所得税額につき、一〇〇分の五の割合による過少申告加算税を賦課決定をした。

四  被告の主張に対する答弁

1  第1、2項は認める。

2  第3項は不知。

3  第4、5項は認める。

4  第6項の(一)、(二)は否認する。

5  第7、8項は認める。

6  第9、10、11項は争う。

第三証拠

一  原告

1  甲第一号証の一、二、第二号証の一、二、第三、四、五号証、第六号証の一、二

2  証人北原千成、同伊藤勘一、原告本人

3  乙第一、二、三、四号証、第九ないし一五号証、第一七号証、第一八号証の一、二、三、第一九号証、第二〇号証の一は、いずれもその成立を認め、その余の乙号証の成立は不知。

二  被告

1  乙第一ないし一七号証、第一八号証の一、二、三、第一九号証、第二〇号証の一ないし四

2  証人内藤常夫、同伊藤重治

3  甲第一号証の一、二、第二号証の一、二、第三、四、五号証の成立を認め、甲第六号証の一、二の成立は不知。

理由

一  請求の原因第1項の事実及び被告の主張第1、2、4、5、7、8項の各事実は、当事者間に争いがない。証人内藤常夫の証言によると、被告の主張第3項の事実が認められる。

二  成立に争いのない乙第一ないし四号証、乙第九ないし一五号証、証人内藤常夫の証言、同証言により成立の認められる乙第五、六、七号証、証人伊藤重治の証言、同証言により成立の認められる乙第八及び一六号証によると、次の各事実を認めることができる。この認定に反する証人北原千成、同伊藤勘一及び原告本人の各供述部分は、前掲各証拠と対比してたやすく措信できない。

(一)  被告は、原告の天竜ボールに対する昭和四九年及び昭和五〇年における貸付金額及び受取利息の金額につき、天竜ボールの代表取締役であった宮下タケ子からの事情聴取及び同人から提示をうけた天竜ボールの支払に関する帳簿などから収集した資料を基礎として推計し、本件更正処分をしたこと。

(二)  被告が収集した資料を基礎とすれば、原告の天竜ボールに対する貸付金額及び受取利息の金額を、被告が主張するとおり、推計することは可能であり、被告が本件更正処分において推計した事実は相当であったものとして是認できるものであること。

三  次に、原告は天竜ボールの取締役であった北原千成、伊藤勘一に対する貸付金の一部である金六〇〇万円を免除した旨主張し、証人北原千成、同伊藤勘一及び原告本人は、右主張に沿う供述をしており、昭和五〇年一二月一五日付原告作成の「貸付金の一部免除了承の件」と題する書面(甲第六号証の二)には、右主張に沿う記載がある。

四  そこで、右債務免除の存否について検討する。前顕乙第三号証、乙第一六号証、成立に争いのない甲第三号証、証人伊藤重治、同北原千成の各証言によると、次の各事実を認めることができる。

(一)  原告は、昭和五一年三月一一日付で昭和五〇年分の所得税の確定申告書を提出しているところ、右申告書には、右主張のような債務免除の事実は申告していないこと。

(二)  原告は、本件更正処分に対する異議申立ての段階になってはじめて右債務免除の主張をなし、前記書面(甲第六号証の二)を松本税務署に提出したこと。

(三)  原告が債務免除を主張する六〇〇万円の債権は、天竜ボールを主たる債務者とし、前記北原、伊藤を連帯保証人ないし物上保証人とするものであるところ、天竜ボールの昭和五〇年度の決算において、右六〇〇万円につき債務免除益を計上し借入金減殺の処理がなされていなかったこと。

五  以上の認定事実によると、原告の主張に沿う前記証人北原千成らの供述部分は、たやすく措信できないし、前記書面(甲第六号証の二)には確定日付がなく、その作成日付である昭和五〇年一二月一五日に作成されたことを認めることは困難であり、ほかに原告の右主張を認めるに足りる立証は見当らない。

六  以上によると、本件更正処分は、原告主張のような事実誤認の違法はないものというべきであるから、本件加算税賦課処分も又適法であって、原告の本訴請求は失当として棄却を免れず、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安田実 裁判官 松本哲泓 裁判官三木勇次は、転任のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 安田実)

別表(一) 昭和四九年分

<省略>

別表(二) 昭和五〇年分

<省略>

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